同時進行ドキュメント　長田君の開業7

良い店舗物件がでてきました。広さが15坪、製麺室を設けた上にカウンターを10席さらにテーブル席を設けられそうです。立地は私には土地勘がないので判断はできませんが駐車場が共同でありますが10台以上とれるので心配はなさそうです。近頃の地方都市はなまじ中心部よりも郊外の道路沿いがねらい目なようです。
長田君はこの店舗で進めていくようなので近々契約です。そして工事が1ヶ月位かかるので8月も半ばの開業になりそうです。
私から見れば順調にすすんでいるようですが、本人とすればなかなか良い出物がなくやきもきした日々であるようです。そこで私の時はどうであったかといえば今とかなり異なる状況でありました。
平成元年2月にたんたん亭を退職し店探しに本腰が入りました。数ヶ月前から休みの度には不動産屋を訪ねまた色んな街を回りもしましたが、物件自体が少なく重い足取りで帰宅する日々がつづきました。当時はバブル景気の只中で飲食業界も拡大の一途であり空き店舗は先を争って埋まっていく状況でした
店舗物件が少ない上に貸し手市場となれば保証金が高くなっており1坪あたり100万円が相場でした。ラーメン店であれば10坪はほしいので保証金だけで1000万円の計算です。私が準備できるのが自己資金と借り入れを合わせて1500万円程です。内装工事と厨房設備で800万円ぐらいですので、資金的にかなり厳しい状況でした。しかし開業を決めたならば前に進むしかない、壁にぶつかれば突破するため全智全霊で向かうと腹を括っていました。これは若さ故の為せる処なのでしょう。
そしてほぼ毎日のように複数の不動産屋に入り込みそこの自社物件だけでなく一般媒介物件の資料もくまなく自分で調べるようにしました。そんな日々が3ヶ月程続いた後についに引き当てたカードが最初に開いた店舗でした。この条件が微妙な処で面積が9.2坪で保証金が800万円、家賃235000円、駅から遠く車の通りは多くとも人度通りはさほどでもないからなのでしょう。しかしこの物件には先約があるのでその審査の後に私の順番となっていました。壁が立ちふさがりますが、不退転の決意をしていた若き日の私は、くじける気持ちもなく、大家さんと不動産屋さんに挑んでいき契約までもっていきました。
状況がどうあれあきらめてはいけませんね。