下目黒日録　2月11日

　たんたん亭においてチャーシューといえばオーブンでローストした肉です。それ故たんたん亭に連なる店でもローストした豚肉をチャーシューとしています。それはしっかり餡の詰まったワンタンがたんたん亭系の証とされると同様な点といえます。
　ラーメンのチャーシューは本来煮豚です。それはそれで美味しいと思います。しかしここで往々にして陥りやすい事は肉の旨みを煮出し過ぎ、チャーシューに旨みが少ない場合があります。それは一般的なラーメンの作り方として、チャーシュー用の肉をスープに入れたりタレに浸んだりする手法を用いる場合に起こりうる事です。ラーメンのような安価な料理で、とりあえずスープにしっかり旨みを出そうとと考えるならば、チャーシュー用の肉からも旨みを引き出すことが行われてきました。その結果出来上がったチャーシューには肉本来の旨みが少なく、肉の繊維と油に後から加えられた味が幅を効かせる代物となります。
　しかし安価な料理としてそれなりの満足感を追求するのであれば、それはそれで認めなくてはいけないでしょう。ラーメンの過去を考えてみれば、今のように豊かな食糧事情以前の庶民の味です。煮豚のチャーシューにそれなりの意義はあったと思えます。
　しかし現代におけるラーメンは過去と違い色々な可能性を追求できる条件が整っているといえます。こんなお手軽な料理といえども限りなく本物を目指しても良いかもしれません。そんなラーメンの先駆けがマスター石原が立ち上げた、たんたん亭の味だとおもいます。