下目黒日録　1月14日

　飲食業の中でもラーメン屋での修業は年月のかかるものとは思えません。何故ならメニューが絞られている為に、習得すべき技術や会得すべき専門知識の範囲が少なくてすむからです。
　私が28歳にしてこの道に入る事を決断したのもその辺りを見越した故であります。また１年半程の就業で店長を任せて頂けたのも、ラーメン作りの基本はかなり絞られた技術であるためでしょう。
　かといって安易な道でもありません。私の目論見として常々述べていますが、独立まで５年はかけて欲しいところです。かといって就業して５年目にやっと仕事が出来るようになっても困ります。１年位でそこそこ仕事を覚えて出来た所から店に貢献して頂きます。そして任せられた仕事を積み重ね高い技術として身につけてもらいます。さらに任せられる範囲を広げて行き経営そのものを勉強して頂きたいと思っております。
　ここのところ従業員の技術で目に見えて向上したところは、平ザルを使った麺あげです。初めは暇な時間帯に一人前ずつ上げてもらいますが、すでに何人前か同時に出来るようになってきています。この段階まで来ると任せられる仕事も増え、技術向上に拍車がかかります。働く事が実に意義深くなる所です。
　麺上げに関して気掛かりな事はS君の事です。彼にはあまり麺上げを任せる機会がないまま独立させます。そんな状況にも平ザルを用いる心意気を見せてくれています。何らかの手立てが必要です。