下目黒日録１１月18日

　雇われている間はここが自分の店であるが如く働く。これは店のために有益であることは言うまでもなく、それ以上に自分に還ってくることのほうが多いようです。それは私自身がかつてたんたん亭の従業員であったことの経験から確かなことです。
　逆に自分の店をもってからは、まだ雇われの身であるような謙虚な気持ちと、人様の店を任せられているかのような責任感を持ちながら仕事をするべきでしょう。
　たまに聞く声ですが、「雇われている間に力を出しきったら勿体ない、自分の店を持って初めて全力で仕事をするべきだ。」というのがあります。大体このての発言をしている人物は独立してもうまくいきません。
　独立してみないとわからないことですが、自分の店で雇われていた時以上の仕事をするのはなかなか難しいことです。なぜなら自分の店と言うだけで責任感が希薄となりつい仕事が甘くなるからです。上からのチェックやプレッシャーから開放されることはそんな結果が待っています。自分を律することは独立者にとって大切な事ですがとても難しい問題です。
　それ故雇われている間に出来るだけ厳しい仕事をしておくべきです。やった分だけが目に見えない財産となります。
　こんな事をS君には良く理解してもらいたいと思っております。