下目黒日録　9月30日

　かづ屋スタイルは多くのラーメン店とは異なる場合があります。しかし世の常識からずれているとは思いません。逆にラーメン界では普通に行われている事に、それはずれているのではと思う処があります。
　例えば、食べ終わったら丼を台の上に上げておくようにお客様に指示している店があります。また出来上がったラーメンを手渡しする店もあります。おかしな事ですが世間はそれを許し、また馴染んでさえいます。
　そんなお方にすれば、お待ちどうさまと支那ソバをカウンターに置こうとすれば、つい手を出してしまう事もあります。お客様とすればお店と友好的な関係を望めばこその心情でしょう。
　しかし実際には熱い丼を手渡しするのは、実に不安定な行為だと思います。またお客様との息がいつも合うとは限りません。忙しい時であれば煩わしく思えてきます。
　そうであってもお客様の心情を考えれば、あからさまに迷惑顔などできません。やはり、ここは丁寧に声を掛けて納得していただくしかありません。また、すこし上手い方法に、手を出しそうな方を予め判別し、一呼吸ほど間を取る策もあります。その間を取るタイミングに熱い丼に手を出さないで下さいと伝えます。丼を出しながら声を掛けるのと比べ伝わる度合いが違います。
　しかし最も目指すべきは、多くのお客様に常連となっていただき、自分の店の流儀に馴染んでもらう事でしょう。幸いにもかづ屋ではお馴染み様が多く、私達の流儀に沿った振る舞われ方をしていただいております。それは25年の積み重ねにより出来てきました。独立開業した店がいきなり自分の店の流儀を徹底させるのはかなりの無理があります。開業した後に一番苦労する処です。