下目黒日録　5月18日

　毎日沢山のお客様と接していると、希に変わった交わり方をされる方に出会します。
　本日二名様でお見えにになったお客様。お召し上がりになった後、お会計にレジ前にいらした時の事です。担当したのはネパール人スタッフのサシ君でした。
　お客様が蝦蟇口の財布を目の高さまでもちあげしきりに小首をかしげながら「中身が足りるか心配だ」と呟きます。近くにいた私も事の成り行きが気になり注意をはらいはじめました。その次のタイミングにお客様がやおら蝦蟇口を開き中から炎を出して見せました。まるでマジックのような手さばきです。
　瞬く間の出来事ですが炎が出たのは私もサシ君も驚き暫し呆然とした表情になったと思います。それを見たお客様は「あれっ！ノーリアクション」と残念そうにつぶやきました。そしてお金は五百円玉の記念硬貨を二枚使い支払いを済ましていかれました。
　人心地ついた処でこれは「財布の中身は火のくるま」と洒落ているのではと考えてみました。（本来は台所が火の車なのでしょうが）
　しかしこんな洒落はネパール人のサシ君にはとても理解はできないでしょう。サシ君曰くこれは意地悪と捉えたそうです。
　瞬く間の出来事でしたが実にトリッキーなやりとりとなりました。